御利益満載「洛中路地裏招き猫屋敷」

みんな一緒に幸福になろう

 中京区の御池通堀川交差点近くの路地裏町家に「招き猫屋敷」がオープンした。正式名称を「洛中路地裏招き猫屋敷」といい、民画絵師の市瀬俊治が主宰している。
彼は「町家倶楽部ネットワーク」の当初からの一員でもあり、路地裏町家に魅力を感じ、そこを会場にした。
彼は、民画絵師として、郷土人形などを描いてきたが、その間に、蒐集した郷土人形や招き猫は、数知れず、その一部を「招き猫屋敷」に展示し、自らも立体の招き猫を作り続けている。そういえば、最近、彼の顔は、猫に似てきたように思える。
入館は、予約制になっているのだが、その理由がおかしい。いわゆる宗教の勧誘やセールスなどで入ってこられると、時間をとられる、作業が遅滞する、おまけに頭に来るというのだ。彼の気持ちはわからないでもないが、せっかく来てくれたお客さんや観光客までも路地の入り口に置かれた「立ち入り禁止、セールス・勧誘お断り」の看板でシャットアウトしてしまうのだ。本人は制作にいそしんでいたらいいかもしれないが、宣伝もしていないから、予約のお客さんは皆無に等しい。せっかく見たいと表を通りがかっても、この看板じゃ話にならない。予約の人は会員になることが必須条件となっている。会員は、「福来い」にちなんで、2951円が必要という駄洒落。この中には、「願いが叶う招き猫のお札」と「招き猫お絵かき教室」で描いた招き猫の葉書を、祈願所に祀り、満願日に会員に送付するという特典がついているが、なかなか会員が集まらない。千客万来という自分の願いも叶わないのに、他人の願いが叶うはずがないのだが、どういうわけか、ここの猫をもっていると子宝によく恵まれるというから不思議だ。
また、墨彩画や絵手紙の教室も併設し、教えているのだが、なんとも貧乏な「招き猫屋敷」の主ではある。
彼は、以前から「伏見人形館」の設立を発願し、ようやく、「招き猫屋敷」の開設にこぎつけた。次の夢は、伏見の地に「伏見人形館」を設立することだが、お金のない彼の意見はだれも採用してくれない。そこで、今、彼は、お世話になった西陣に「郷土人形・伏見人形館」を開設しようとしている。全国の蒐集家からの奇特な寄付を「願いが叶う招き猫」に託して、待ち望んでいる。
「一歩一歩、夢を実現するため、描きつづけて来た招き猫。ありがたい願叶う招き猫にあやかって、みなさんも幸福になってほしい。」と彼は言う。だが、そういう貴方が最初に幸せになってもらわないと、困るんだわニャン。と思いきや、会社を経営して、毎日何千万円とういうお金を動かしていた時よりも、日々の生活に困る今のほうが、健康で、笑っていられることが不思議だそうだ。周囲の人からも「今のほうが笑顔が多い」と言われるそうである。これそが、御利益(ごりやく)なのかもしれない、人の幸せというものは、どこに転がっているか不思議なものだとつくづく思う。